豚バラ大根ノート

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PCR検査の特異度について2:日本医師会COVID-19有識者会議の報告書

2020年7月22日付で日本医師会COVID-19有識者会議が

 COVID-19感染対策におけるPCR検査実態調査と利用推進タスクフォース:中間報告書解説版 (link )

を公表している.p.5あたりから特異度と陽性的中率(陽性と判定された人が実際に陽性である割合.偽陽性が多ければ当然この的中率は下がる)についての議論があるが,そこでは特異度を99.99%と「仮定」している.特異度を99%と仮定した場合と99.99%で仮定した場合では生じる結果が大幅に異なるため「仮定」の根拠*1が重要となるが,ここでは

Susan A. Galel et al., Sensitivity and specificity of a new automated system for thedetection of hepatitis B virus, hepatitis C virus, and human immunodeficiency virus nucleic acid in blood and plasma donations, Transfusion. 2018 Mar58(3):649-659. ( link )

を根拠として挙げており,論文のTABLE 2には99.99..%といった数字が並んでいる.ただし報告書解説版では

このため,PCR検査の運用においては検査目的に合致した検査の設計と性能評価(妥当性確認), 及びそれに基づく内部精度管理,さらには外部精度評価による検査室の能力モニタリングによる継続的な精度の確保と維持が重要となる.

 とも書かれており,現場で精度が下がらないための注意も喚起しているように見える.

ちなみに上の文章のすぐ後には,

検査性能を踏まえて,事前確率を高めた検査の効果的な利用の考え方は,疑い症状のある個別の患者診療において意義がある.しかしこの考え方は,有病率が必ずしも高くない疫学調査において特異度の高いPCR検査を用いた場合は,必ずしも該当しない.むしろ感染制御の観点からは,広く検査を行うことにより陽性者を拾い挙げることに意義がある.一方,検査の実施件数を絞った場合、感染患者の診断の機会を逸することにより,患者診療上では院内感染防止,公衆衛生上では地域流行防止,ヘルスケアでは 社会・経済活動の継続、政策立案上では社会経済回復・維持,それぞれにおいてのリスクとなる(後述). (強調は筆者による)

とも書かれており,日本医師会PCR検査を幅広く行うことを勧めている模様.

*1:特異度を99%と仮定する根拠をご存知の方がいたらぜひ教えてください.